2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730034
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 卓平 Kobe Gakuin University, 法学部, 准教授 (00330415)
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Keywords | 国際法 / 国家責任 / 緊急避難 |
Research Abstract |
緊急状態をめぐる問題は、自己保存の要請と法秩序の維持の要請が衝突する問題である。緊急状態をいかにして国際法の中に取り込み、理論的位置を与えていくべきか.この問題をめぐっては、様々な異論反論がなされてきた。確かに、反対説には一定の説得力がある。しかし、国際社会において、何らかの緊急状態が起こる可能性を否定できず、自己保存の要請に迫られる場合がありうるという現実を無視はできない。緊急状態理論の反対説に立つならば、結局、この問題を政治に任せてしまうことに事実上なりかねないのではなかろうか。その観点から、我々が為すべきことは、先人が行ってきた、緊急状態理論の洗練化の作業を引き継いでいくことである。具体的には、今日までに発展してきた緊急状態理論の内容の実定性、内容的正当性などを検討し直し、より正当かつ理論整合的な実定法規範を提示していくことである。本研究はこの課題に取り組むものである。 緊急状態理論の研究において必要な検討は、(1)国家実行の検討、(2)国際裁判例の検討、(3)法典化作業・学説などの検討、(4)関連する類似概念との異同の検討、(5)(1)から(4)の検討を踏まえて、申請者自身の緊急状態理論を提示すること、の5点である。平成19年度は、主に(2)の研究として、ICSID仲裁裁判所における判断を分析した。同仲裁裁判所は、近年、特にアルゼンチンの経済危機を背景に、緊急避難に関する判断を立て続けに行っている。これらの判断は、緊急避難の法理の解明のために、貴重な研究素材となっている。そこで、秋にこの研究成果を学会誌(国際法外交雑誌)に投稿したところ、査読の末、掲載を許された。
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