2006 Fiscal Year Annual Research Report
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18730035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 寛子 北海道大学, 大学院法学研究科, 助教授 (10301863)
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Keywords | 航空産業 / 競争政策 / 規制改革 / 日米比較 / 排除行為 / 参入阻害 |
Research Abstract |
平成18年度においては、米国航空産業の規制改革の変遷および、既存事業者の新規参入者に対する参入阻害行為について、文献に基づく研究を中心に行った。当年度では、米国規制産業における規制改革、およびその間の産業の構造・競争状況の変遷について、時系列的に整理することが主たる目的であった。この点については、概ね満足できる結果が得られたと考えている。 主に以下のような内容が明らかとなった。米国の航空産業は1978年の航空自由化以降、ほぼ完全に参入・退出、運賃規制が撤廃され、高利潤路線への新規参入が相次いだ。その間、安全運航上の問題、定時運航の不徹底等、技術的側面等からの問題点があった一方で、既存事業者による参入阻害行為が多様な形で行われていた。並行して、既存主要航空会社によるハブ空港形成、ハブ空港発着路線における市場支配力問題が生じた。 既存事業者による具体的参入阻害行為としては、新規参入者の運航時間帯前後での増便・低運賃設定、コンピューター予約システム(CRS)における新規参入者の差別的取扱、整備受託拒否等がある。この間、米国司法省によるアメリカン・エアライン社へのシャーマン法2条訴訟は、連邦控訴審が伝統的判例法理からかかる主張を認めなかった。運輸省は、2001年に不公正排他行為に関する最終報告書を公表したものの、目立った規制は行われていない。 一方、2001年の同時多発テロ及びSARS等各種伝染病の流行その他、外部的要因に基づき、市場環境が激変し、既存大手は次々と連邦破産法に基づく更生手続きの途上にある。一方で、Southwest社をはじめとする新規参入者、既存大手の経営する低コスト航空会社の伸張著しい。また、インターネット環境の激変も競争形態に著しい影響を与え、市場の競争的性質は強まっている。 本年度、以上のような競争環境の変遷についての分析を行ったが、規制の段階的改革との相関関係に関する研究が必要であるとの認識に至った。この点が次年度以降の課題となる。
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