2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 寛子 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (10301863)
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Keywords | 規制改革 / 競争政策 / 航空産業 / 航空産業 / 電気通信 / 事業法と競争法の協働 / マージン・スクイーズ |
Research Abstract |
航空産業における規制制度と、独禁法適用のあり方について、前年度以前に行った日本の研究と米国の研究を更に発展させた。 本年度の研究では、排除行為規制の基準についての先端的議論の研究を行った。これは、欧米において、独占的事業者による排他的行動規制についてのガイドライン等がこの一年ほどの間に次々と公表されたことによる。そこにおいては、様々な排除行為に対する違法性判断基準が検討されている。これらのガイドライン等は、航空産業に限らず、産業横断的・一般的なものである。また、現在日本においても、欧米で問題視されているのと同様の排除行為についての、基準精緻化が求められており重要となると考えられたため、これらについての研究を深めた。また、この研究は、航空においても十分に適用可能なものであり、重要性が高い。 さらに、規制産業での競争政策を論ずる上で、もっとも議論が進んでいるとされる電気通信産業についての研究からも示唆を得ることができた。ECにおける競争法上のマージン・スクイーズ規制に対する欧州司法裁判判決・欧州委員会決定、及び米国最高裁判例が相次いで出されたため、これらの事例分析と関連する理論分析を行った。このことからは、垂直統合型事業者の行う、不可欠なインプットの価格と、競争に面している下流での商品・サービス競争におけるアウトプットの価格の設定を通じた他者排除についての違法性判断基準のあり方についてそれぞれ大変大きな示唆を得ることができた。米欧では、これら行為への違法性判断基準も大きく異なっているのみならず、競争法と事業法規制との協働関係及び法適用の組み合わせ・そのバランスについても、大きく異なっている。そこには法制度や社会、市場状況の相違が大きく影響していると考えられるが、電気通信において見られたこれらの法適用のあり方、事業法と競争法との協働のあり方は、航空産業に対しても非常に大きな示唆を有するものである。 前年度までに行った、日米における航空産業の法制度、背景事情等についての研究をまとめる上で、上述のような研究から大きな示唆を得られると考えている。但し、予定していたインタビュー調査を行うことができず、平成20年度は主に文献調査にとどまった。しかし、こうした文献調査と、他分野の研究を通じて得られた成果をまとめ、論文執筆につなげていくことができると考えている。
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