2006 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツ選手の労働者性と事故補償のあり方に関する考察
Project/Area Number |
18730041
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川井 圭司 同志社大学, 政策学部, 助教授 (50310701)
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Keywords | プロ・スポーツ / 労働法 / アメリカ:イギリス / EU / リーグ / 労働者性 |
Research Abstract |
18年度の研究では、集団的および個別的労働法におけるプロスポーツ選手の取り扱いについて、日米欧の比較的研究を中心に実施してきた。その具体的成果である「プロスポーツと労働法をめぐる国際的動向」(日本労働法学会誌)では、プロスポーツと労働法のかかわりについて国際的動向(米・英・EU)を概観したうえで、各国のプロスポーツにおける労働法の意義を整理し、日本における課題検討の足掛りを得た。 まず、アメリカ、イギリス、EUではそれぞれの国において、リーグに所属するプロ選手は、原則として、プロ選手は集団的および個別的労働法上あるいは労災補償制度上、「被用者(労働者)」であることのメリットを享受している。ただし、プロ選手については労働法的規制から除外するなどの立法措置も見られる。また、アメリカの労災補償制度については州ごとに取扱いが異なっている。各州の取扱いについては19年度において研究を深める予定である。 他方、日本プロ野球およびJリーグでは実務上、選手は個別的労働法上の労働者と解されておらず、労災補償制度の枠外におかれている。ただし、労災補償制度に準じた独自の補償制度を構築しており、実質的観点からみて著しく保護に悖るというわけではない。これに対して四国アイランドリーグ、bjリーグなどの新興のプロリーグに加え、バレー、ラグビーなどプロ化が加速する競技においては選手の労働者性について競技あるいはチームごとで不統一な解釈および取扱いが遍在しており、労災補償の観点からは総じて不明瞭かつ脆弱であるという実態がフィールド調査により鮮明になり、労働者性の再考と労災補償のあり方についての課題が浮き彫りになった。これらをめぐる具体的政策検討が19年度の課題となる。
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