2007 Fiscal Year Annual Research Report
判例分析による現代中国の解雇法理の研究-解雇紛争解決の予測可能性の探求-
Project/Area Number |
18730042
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 昇 Kyushu University, 大学院・法学研究所, 准教授 (60352118)
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Keywords | 社会法学 / 解雇 / 中国法 / 労働法 / 労働契約 / 失業保険 |
Research Abstract |
本研究は、中国の解雇法制と労働契約法制を研究対象としているが、2007年6月に中華人民共和国労働契約法が制定され、今年1月から施行されるに至った。同法は、1995年から施行されている中華人民共和国労働法の労働契約に関する規定について、一部修正し、また、大幅に内容の具体化を図っている。特に、労働契約の締結、有期契約の制限、解雇の要件やその手続などは今後の実務において重要な規定を定めている。さらに、実態としては先行していた労働者派遣やパートタイム(非全日性)労働について新たに明記した。従前の解雇に関する判例法理は、否定されるわけではないが、今後は、新法に基づいた判決が下されることになる。また、2007年12月末に、中華人民共和国労働争議調解仲裁法も制定され、個別的な労働紛争処理の手続法が整備された。中菌労働契約法は、労働契約の解釈・適用のルールを設定すると同時に、労働者の権利保護という機能を併せ持つことも指摘されている。ルールが設定され、労働者の権利・義務が明らかになることによって、むしろ労働紛争の増加が予想され、紛争解決の手続法は、重要な意義を有する。今年度は、こうした新しい立法の動向について、研究を進めた。日本でも、昨年、労働契約法が制定されたこともあり、日本の判例法理や法制の動きも視野に入れながら、中国の過去の裁判例の分析と労働契約法の立法経緯の研究を進めてきた。また、解雇規制立法は、失業時のセーフティネットとも密接に関連していることから、日本と中国の失業保険についても考察してきた。現在、今年6月末のアジア法学会の報告(タイトル:中国労働契約法の意義一制定から1年が経過して)と7月に掲載予定の論文(タイトル:中国労働契約法の制定とその意義(仮)日本労働研究雑誌2008年7月号)の準備を進めており、これらは本研究のこれまでの成果をまとめるものである。
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Research Products
(4 results)