2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730052
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
増井 敦 京都産業大学, 法学部, 講師 (10411018)
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Keywords | 責任原理 / 集合的行為 / 共謀共同正犯 / 暴行 / 傷害致死 |
Research Abstract |
本研究は、複数の者が協働して犯罪を遂行した場合に、個々の関与者に対して適切に刑事責任を問いうるような責任原理を明らかにすることを目的とする。これは、責任原理と集合行為原理の複合問題であって、それぞれの問題を原理的に解明し、それらを総合することが求められる。 今年度は、まず、法哲学的な基礎理論研究として、近代刑法が採用してきた責任原理とはどのようなものであったのかを批判的に検討しながら明らかにし、それとは異なる関係的責任論に基づく責任原理とはいかなるものなのかを解明することに努めた。過去50年間の英米の集合的責任論の展開をレビューする中で有益な示唆を得ることができたが、基礎理論研究については引き続き取り組む必要がある。 集合行為原理については、関係する社会学・会心理学の文献を収集し精査した。この分野における社会心理学の成果を鳥瞰するとともに、自己カテゴリー化理論に関して新たな知見を得ることができたが、引き続き調査研究を進める必要がある。 さらに、集合的行為や責任原理に関わる刑法解釈論上の問題について、我が国の裁判例を素材にしながら検討を加えた。集合的行為に関しては、暴力団組長である被告が自己のボディーガードらのけん銃等の所持につき直接指示を下さなくても共謀共同正犯の罪責を負うとされた事例を取り上げて考察した。また、責任原理に関わるものとして、軽微な暴行から重大な結果が生じたような場合の取り扱いについて考察した。これらはそれぞれその成果を公表した。
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