2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730052
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
増井 敦 Kyoto Sangyo University, 法学部, 講師 (10411018)
|
Keywords | 責任原理 / 集合的行為 / 騒乱罪 / 共同意思 |
Research Abstract |
本研究は、複数の者が協働して犯罪を遂行した場合に、個々の関与者に対して適切に刑事責任を問いうるような責任原理を明らかにすることを目的とする。これは、責任原理と集合行為原理の複合問題であって、それぞれの問題を原理的に解明し、それらを総合することが求められる。 今年度は、法哲学的な基礎理論研究として、過去50年にわたって英米の法哲学、倫理学において集合的責任という概念をめぐっていかなる議論が展開されてきたのか、まず理論面において、全体的アプローチと個別的アプローチの対立を経て近時の関係的責任論に基づく責任原理に至る道筋を辿り、集合的責任論の展開過程を明らかにすることに努めた。さらに、企業活動やチーム医療、戦争責任などの個別の問題領域への応用に関する主要な論文を収集し、検討を加えた。基礎理論研究については引き続き取り組む必要がある。 集合行為原理については、今年度も引き続き、関係する社会学・社会心理学の文献を収集し精査した。この分野における社会学・社会心理学の成果を鳥瞰するとともに、自己カテゴリー化理論に関して新たな知見を得ることができたが、さらに調査研究を進める必要がある。 さらに、集合的行為や責任原理に関わる刑法解釈論上の問題について、集団犯とされる騒乱罪に関して、その法的構造をどのように理解すべきかを検討し、騒乱罪規定に関する注釈を著した。また、騒乱罪の成立要件における「共同意思」要件の意義をどのように解すべきかを論じた論文を近く公表予定である。
|