Research Abstract |
本研究は,現実に行われている商取引が,フォーマルな法ルールのみならず,取引当事者間の暗黙の合意や慣習の下に展開されている実態を解明することを目的とするものである。3年間の研究期間のうち中間年度に当たる本年度は,前年度に続いて理論的・基礎的な研究を進めるとともに,実質的な研究成果の発表も開始された。 まず,前年度に引き続いて若手経済学者との「法と経済学」研究会に参加して経済学理論およびその実証手法への習熟を図った。特に,実証的研究手法については,この分野について世界の最先端を走る米国での研究成果を取り込むため,米国ミシガン大学へ赴いて,最尤法等のいわゆる古典的統計理論における最新の実証手法を習得した。 このような研究活動を通じ,私的な合意・慣習・規範が,それ単独では存在せず,フォーマルな法ルールと相互作用を営みながら現実の取引世界に影響を与えていく存在であることを,理論的・実証的に解明する作業を進めた。その一つの成果が,本年度の研究発表に掲げた雑誌論文3点「みんなで渡れば怖くない-第三者保証をめぐる私的秩序と法制度の相互作用」「保証-私的秩序と法制度が出会う場所-」「Guaranty: where private ordering meets the legal system」である。この一連の論文においては,金融取引において,保証契約が,いかにしてフォーマルな法ルールの外に存在している私的なネットワークを活用しつつ,法ルールと相互補完的に機能しているのかを,マイクロファイナンス,わが国の無尽・頼母子講,ヨーロッパ中世の都市間交易を題材に浮かび上がらせて見せた。これらの成果は,東京大学COEプログラム・ソフトロー国際シンポジウム大会において報告されることになり,海外からも注目を集めるに至っている。
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