2008 Fiscal Year Annual Research Report
子ども・親・国家間関係の法的構造-フランス育成扶助制度の研究
Project/Area Number |
18730059
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保野 恵美子 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70261948)
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Keywords | 子ども / 親子 / 育成 / 児童 / 児童福祉 / 家族 / 児童虐待 / 民法 |
Research Abstract |
(1) まず、親権法制と児童福祉、少年非行等との関係について、フランスの新法「犯罪の予防に関する2007年3月5日の法律第297号」の研究(後掲)を行い、次のような諸点を明らかにした。 第一は、フランスでは上記新法と同年に制定された児童保護改革法とがあいまって、国家レベルでの司法的対応たる「育成扶助」に加えて、県の児童社会扶助分野での行政的対応、市町村レベルでのより予防的な段階における諸措置が整備され、相互の関係調整が図られており、子どもの育成に対する公的主体による支援について、重層的・補完的な体制が整備されている点。 次に、国による司法的対応においては独立している「児童保護」と「少年非行」の両分野が、司法的対応以前の段階においては接近、さらには交錯するかのような傾向が認められる点。 最後に、フランスでは2006年に「親責任契約」という新制度が導入されて以来、多様な公的機関による親権の行使に対する評価・監督が強化され、さらに、親権の目的を子どもの保護から社会の一般利益の保護へと再定位するかのような傾向が見られることである。 (2) 次に、フランスの制度を英国法と対比し日本への示唆を得るという点については、年度中に研究会での報告(20年度中に5回)を行うことで、公表の基礎とするための概念整理、制度の対照表の整備を進めることができた。その中で、日本法の問題点は(1) 親権行使の分担を調整するルールの不在、(2) 公的主体の主導による後見の発動及び適用がないことに存するとの認識に至ったが、本年度中の公表には及ばなかったため、次期の研究課題の中心と位置づけている。
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Research Products
(1 results)