2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳 明昌 筑波大学, 大学院ビジネス科学研究科, 助教授 (10261538)
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Keywords | 平等取扱い・平等原則 / 公正性 |
Research Abstract |
英米独を中心とした比較法的考察に基づき、平等取扱いが問題となる場面を洗い出す作業を行った。まず、平等取扱いの要請は、私法分野に限っても、団体法としての性質を有する会社法、労働法、保険法、さらに市場法としての証券取引法において問題となることを確認した。「平等取扱い」は法分野ごとに独自の現れ方をするが、実際上および理論上、絶対的に貫徹される要請とはなりえていないことも確認できた。欧州では、株主間の水平的な関係において平等原則が問題となるものではないとの有力な指摘もみられる。その意味で、平等取扱いそれ自体を自己目的化するのではなく、平等取扱いの要請の基礎にある実質的かつ規範的な基準を、各々の制度の存立基盤にまで立ち返って明確化する必要がある。平等取扱いの要請と対立する実質的かつ規範的な基準との緊張関係の中で平等取扱いの制約可能性を問題状況ごとに検証した上で、平等あるいは不平等取扱いについての統一的な正当化根拠を探ることが求められる。より具体的には、「少数株主を差別的に取扱うことになるが、会社の事業目的あるいは会社の利益に照らして正当化できるか」という問い方がそれである(平等取扱いと公正性の対立)。「合理的な差別であれば許される」というわが国における有力な主張は、平等取扱いと対立する評価軸との緊張関係において「合理性」の中味を明確化することではじめて説得力をもちうる。ドイツのある学者は、諸々の制度における平等取扱い要請の強度(「厳格な平等」から「恣意的な扱いの禁止」まで)に応じて、平等取扱い義務の階層化を分析枠組みとして提示するが、あるべき一つの方向性を示すものとして注目に値する。今後は、平等の基礎にあるニーズ(例えば、市場における投資家の信頼確保)の具体化や価値基準の中身それ自体(例えば、公正性の基準)のさらなる明確化に取り組みたい。
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