2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳 明昌 University of Tsukuba, 大学院・ビジネス科学研究科, 准教授 (10261538)
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Keywords | 平等取扱い / 公正性 |
Research Abstract |
会社法及び金融商品取引法において、株主や投資家の「平等取扱い」が要請される根拠とその妥当範囲を明確化するため、今年度は、「平等」「効率性」「公正」といった規範的な価値の対立を意識しながら、各論的な問題についての検討を行った。具体的な問題は、いずれも組織法としての会社法と市場法としての金融商品取引法の双方の観点からの考察を要するものである。第三者割当増資の規制のあり方、投資家又は株主への情報開示の公正性(いわゆるレギュレーションFD)の問題、公開買付けにおける売却機会平等の問題である。「平等取扱い」は、それ自体が目的であるわけではなく、組織法や市場法の達成すべき目的に資するものとして位置づけられる。市場機能を損なわないよう投資家の信頼を確保することが主要な目的であるとされる場合、立法政策として非常に厳格な平等取扱いが要請されることになるのに対し、市場での自由な交換を前提とする立場によれば、市場機能を損なう恣意的・濫用的な態様のみが規制されることになり、平等取扱いが必ずしも強く要請されるわけではない。人権侵害等に当たる場合を除き、平等取扱いは、究極的な政策目的との関係で意味をもち、この場合の問題は、政策目的達成のために平等取扱いが必要かつ合理的であるかどうかにある。平等原則が目的のための手段原理であることは、歴史的な考察からも裏付けることができる。平等は人々の間の格差が大きくなったとき等の是正原理としての機能を果たすといわれるゆえんである。最終的に、わが国における会社法や金商法の解釈問題を考える場合、時代を超えて普遍的に妥当する平等原則を原理的に導くことは適切なアプローチではなく、組織法や市場法の果たす役割を見据えつつ、現代の、わが国において、どこまで平等取扱いが要請されるかを探求するアプローチが求められる。
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