2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村上 正子 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (10312787)
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Keywords | 環境国際紛争 / 民事司法 / 団体訴訟 / 当事者適格 |
Research Abstract |
本研究は、環境国際紛争の処理にあたって、現に生じている、又は将来生じうる問題点を、国際法及び(国際)民事訴訟法双方の観点から多角的かつ総合的に検討し、越境環境損害における被害者に、民事司法へのアクセスをどのように確保するべきか、その具体的手段を明らかにすることを目的としている。環境国際紛争を処理する方法としては、大きく分けて国家レベルで、国家間の問題として処理する方法(国際法からのアプローチ)と、私法上の紛争として私人間で裁判を通して解決する場合(国際民事訴訟法からのアプローチ)とが考えられる。本研究では、双方のメリット・デメリットを比較検討し、また相互の関連性を考慮して、環境国際紛争における私人の救済の可能性とその限界を明らかにし、最終的には、我が国の現行制度の下での解釈論の可能性と、将来の立法に向けての提言を試みたいと考えている。 研究年度一年目である本年度においては、国際法からのアプローチをする前提として、司法へのアクセスの確保という観点から、国内の環境訴訟における当事者適格に関する我が国の従来の議論を見直し、その問題点あるいは限界を明らかにすることを試みた。環境紛争は、影響の及ぶ範囲が不特定であり、私人が裁判によって紛争を解決しようとする場合、個人の実体的利益が不明確であることから、実体的利益の帰属主体を適格当事者と考える伝統的な理論では、必ずしも適切な当事者を選択できず、その結果、個人の司法へのアクセスが制限されてしまう。そこで、環境紛争に関する司法へのアクセス権の確保のための第1段階として、直接に被害を被った個人以外の個人や団体(例えば、グリーンピースのようなNGO団体)に原告適格を認めることが、我が国の現行法の解釈として可能かどうか、特に消費者団体訴訟制度との関係を中心に検討を進めた。 なお、今年度の研究成果は、筑波法政43号(9月公刊)に掲載の予定である。
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