2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730073
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
山下 純司 Gakushuin University, 法学部, 教授 (90282532)
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Keywords | 情報 / 売買目的物の瑕疵 / 継続的関係 / パートナーシップ契約 / 信認関係 |
Research Abstract |
イギリス法における、売買目的物に瑕疵がある場合の買主の救済手段についての研究は、昨年度の比較法学会でも報告をおこなったが、その後研究を進め、新たな情報も盛り込んだ上で、雑誌論文として公表を行った。事業者間契約関係と事業者消費者間関係において、買主の救済手段がどのように変化するかといった点について、買主の検査通知義務と救済の関係など、より詳細で正確な情報を提供できたものと考えている。 パートナーシップ契約と慰謝料請求権に関する研究は、最判平成16年11月18日裁判所時報1376号3頁の判例評釈の形で公表した。裁判所が私的に形成された異性の非婚姻型の生活共同体関係にどこまで介入するべきか、また両当事者間で結ばれた関係形成の合意にどのような法的効力を認めうるかといった観点から研究を行い、私的な信頼関係が突然裏切られたというような場合に、裁判所が介入することの危険性、困難さといった問題を指摘した。生活共同体の関係は、開始当初にその後の経過を予測する情報が不足しており、契約的合意の有効性が疑われる反面、事実上の信認関係に基づく相互の義務負担を一定範囲で認めうるようにも思われ、新たな研究テーマとして興味深い。 法律行為の要素の錯誤に関する研究は、最判平成元年9月14日家裁月報41巻11号75頁の判例評釈の形で公表予定である(年度内に執筆したが、事情により公表が遅れている)。財産分与合意における錯誤に関する判例であり、夫婦関係にあるものが離婚協議という特殊な環境において交渉の結果締結した合意に、情報の不十分さから誤りが生じたという紛争である。いわゆる動機錯誤に関する判例の立場の分析など、一般的なテーマにも言及しえた点で、一定の成果が上げられたものと考えている。
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Research Products
(3 results)