2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730080
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴原 宏昭 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10409576)
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Keywords | 担保 / 保証 / 経営者 / 均衡の原則 / フランス法 |
Research Abstract |
本研究は、経営者保証の特質を理論的に明らかにするとともに、その保証負担を一定の範囲に制限する方策の可能性を探求することを目的として進められている。 初年度である本年度は、保証人の財産及び収入と明白に不均衡な保証契約の効力を制限する「均衡の原則」を有するフランス法において、この原則の経営者保証への適用をめぐる議論を検討した。フランス法の動向を、五つの時期に区分して、さらに、これに裁判官と立法者の視点の区分を導入することで分析作業を進めた。 フランスの裁判官は、立法規定のない場合、契約内容への介入権限を制約されているのであるが、フランス消費法典L.313-10条が消費信用の個人保証にのみ均衡の原則を定めていた当時において、1997年の破毀院商事部判決は、民事責任構成をとることで、経営者保証について保証負担を縮減することに成功した。しかし、この民事責任構成には法理論上の欠陥があり、これを一般化しえない理由を明らかにすることができた。 立法の領域においては、2002年の破毀院商事部判決が経営者保証の縮減に否定的な態度をとった後、2003年、経営者保証への均衡の原則の導入を明文化する消費法典L.341-4条の新設によって、再び経営者保証は個人保証と同列に扱われることになる。しかし、判例・裁判例と立法の動向を照らし合わせるとき、両者の間には微妙なズレのあることに気付かされる。その背景にある技術上の原因を明らかにすることができた。 なお、2006年、フランスの担保法は改正されており、草案の段階では、消費法典L.313-10条及びL.341-4条を廃止して新たな規定を設けることで、再度、経営者保証と個人保証を区別することが提示されたが、実現には至っていない。次年度は、その原因を、現在進行中の債務法改正作業の動向に注視しつつ、引き続き検討するとともに、さらに研究を進めていく予定である。
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