2007 Fiscal Year Annual Research Report
商品等表示の機能の多様化に対応した法的保護の可能性と限界
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18730083
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
蘆立 順美 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (60282092)
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Keywords | 商標 |
Research Abstract |
平成19年度は、主に、わが国の商標権の保護範囲と商標の機能の理解との関係について研究を進めた。商標の出所識別機能の侵害判断に関しては、第一義的には、商標権者がその出所と位置付けられ、問題となった商標が示す出所と具体的な商品等の出所との同一性が問題とされるが、裁判例および学説においても、商標権の出所の概念については、厳密な商標権者との一致が問題とされているのではなく、広く商標権者の許諾の範囲にあると認められる場合についても、出所の同一性は害されないものと考えられている。また、商標権の濫用が争われている裁判例においては、権利者の許諾の範囲とは認められないような商標の使用についても、市場の需要者において認識される商標の出所との同一性が認められる場合には、出所表示機能が害されていないとの判断が下されている。こうした判断は、商標の信用の蓄積の手段としてより多様な手段を権利者に認めることを可能とし、また、出所識別をより具体的に把握することにより、すでに蓄積された信用を保護するという点で合理性が認められる。 これに対して、品質保証機能の理解については、学説においてその理解に対立が存在するところではあるが、商標への信用の蓄積の手段として、商品等の品質を含めたコントロールを権利者に認めるべきであるとする場合、上記の出所識別機能め判断のように、具体的な事案を考慮した柔軟な検討枠組みを品質保証機能の判断の際にも取り入れることにより、信用の蓄積への実質的な害が存在しない、品質の同一性保証を保護範囲から排除することができるのではないかとの知見を得た。
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