2008 Fiscal Year Annual Research Report
商品等表示の機能の多様化に対応した法的保護の可能性と限界
Project/Area Number |
18730083
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
蘆立 順美 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (60282092)
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Keywords | 商標 |
Research Abstract |
平成20年度においては、6月に国士館大学において開催された日本工業所有権法学会において、本研究課題において従来から調査・分析を進めてきた内容について報告する機会を得た。報告の内容としては、並行輸入に関する欧州司法裁判所の裁判例の整理と分析、および、わが国の並行輸入に関する裁判例と学説の議論の整理と分析を取り上げた。本報告においては、欧州司法裁判所における商標の出所表示機能の理解と、商品の品質に言及する説示の位置づけについて紹介をし、品質に関する言辞については、品質の管理主体という文脈において、出所の同一性の一要素として言及されているものが多くを占めると位置づけた。次に、わが国における商標の機能の理解、特に、商標の品質保証機能における議論に関しては、具体的な品質を考慮すべき根拠について検討し、商品の品質の同一性を保護の対象として考慮すべき場合が認められるとしても、国ごとに品質に差異を設けることにより商標へ蓄積される信用やイメージをコントロールするという商標権者の意図のみによりそれが正当化されるのではなく、実質的に商標への信用の蓄積への害があるかどうかについて、具体的な市場の状況や需要者の具体的認識を検討の対象に加えるという判断枠組みを採用すべきではないかとの提言を行い、学会の参加者からの多くの有益な示唆を受けることができた。 なお、この報告の内容については、さらに整理を加えた上で、工業所有権法学会年報の掲載論文として提出しており、公表予定である。
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