2008 Fiscal Year Annual Research Report
特許権・著作権の侵害関与者の責任に関する総合的研究
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18730084
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島並 良 Kobe University, 大学院・法学研究科, 教授 (20282535)
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Keywords | 知的財産権 / 間接侵害 |
Research Abstract |
前年度までの解釈論に関する研究に続いて、今年度(平成20年度)は立法論について検討を加えた。このうち、著作権の間接侵害に関する立法論については、私見の概要を知財研フォーラム誌75号(2008年)および77号(2009年)で公表した。その結果得られた結論を整理すると、著作物の利用を助長する間接行為に対する差止請求権は、次の場合に認められるべきであると考えられる。 第一に、間接行為者と直接行為者とを同視できる場合、すなわち直接行為の遂行決定に対する強い支配と、その結果の帰属が認められる場合に対しては、現行法のままでも差止請求権が認められるべきである。その場合に、直接行為者に関する最終的な著作権侵害の成否を問わず、また権利制限規定の適否は間接行為者を基準に判断される。 第二に、間接行為者が直接行為者を代位すべき場合、すなわち間接行為者が直接行為を管理支配しそこから利益を得ることによって、活動領域を拡張している場合については、差止請求権が立法によって認められるべきである。この立法は、著作権に新たな支分権を創設することによって実現され、また直接行為者に関する著作権侵害の成立は前提とすべきでない。 第三に、間接行為者が直接行為者を補充すべき場合、すなわち直接行為が違法であるにも拘わらず、直接行為者への責任追及が法律上あるいは事実上著しく困難である場合については、著作権侵害の蓋然性が高いことを認識しつつそれを助長した者に対してのみ、差止請求権が立法により認められるべきである。この立法は、新たなみなし侵害行為類型を設けることによって実現され、また直接行為者に関する最終的な著作権侵害の成立を前提とすべきである。 現在、文化庁の審議会でこの点に関する著作権法改正が検討課題として上程されており、本研究の成果が一定の貢献を果たすことが期待される。
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Research Products
(1 results)