2006 Fiscal Year Annual Research Report
近隣民主主義法施行後のフランス都市(アミアン市)における「住区評議会」の実態調査
Project/Area Number |
18730099
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 晋自 愛知県立大学, フランス学科, 助教授 (60363909)
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Keywords | 政治学 / 地域民主主義 / 地方分権化 / 住民合議 / 近隣民主主義 / 住区評議会制 / アミアン市 / アミアン市住区委員会連合 |
Research Abstract |
ミッテラン左翼政権下で1982年に開始された地方分権改革は、1992年の住民参加改革を経て2002年の近隣民主主義法へ到達し、2004年以降、反対に保守政権の下で「第2次地方分権改革」が開始されている。本研究において注目したのは、左翼政権下で推進された地方分権改革のなかに、彼らの「ジャコバン主義者」としてのイメージとは違和感のある市民参加論的要素が含まれている点であり、この点を整理するためまずモーロワ元首相が2000年に提出した報告書『地域公共政策の再建』について検討し、さらにこれを法文化した2002年法が、地域住民と自治体との「近隣民主主義」強化の観点から、人口8万人以上のコミューン(市町村)に「住区評議会」の設置を義務づけている点を明らかにした。 しかし、地域住民組織による自発的活動が成果を収め、「近隣民主主義」を既に実現している幾つかの都市にとっては、同法は「余計な法制度化」であったかもしれない。2006年9月にアミアン市で実施した予備的調査では、同市役所の職員や地域住民組織であるアミアン市住区委員会連合会長と面会し、同法をどのように受け止め、どのように対応したのかについてインタビューを行った。その結果明らかになったことは、同市議会が、2002法が住区評議会制の導入を義務づけながらも、実施形態については市議会の決定に任せている点に依拠し、従来の住民合議システムを続行することによって同法の要請に応えるとした点である。 このことから分かることは、地方自治の強化を目指す地方分権改革が、全国一律の法制度改革として実施される限りにおいて、本来自発的活動に支えられるべき住民自治に対し意図せざる抑制要因となる可能性があるという点であり、近隣民主主義強化という課題は、結局各自治体の状況に大きく依存せざるをえないということである。 次年度へ向けては、今回解明された制度枠組みにおいて、アミアン市の諸アクターがどのような活動を展開しているかについて本格的な実態調査を実施(本年9月)するとともに、これらをまとめ本年10月に開催される日本政治学会で報告する予定である。
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