2006 Fiscal Year Annual Research Report
日中韓における知的アクターの社会的機能と影響に関する比較的研究
Project/Area Number |
18730109
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 淳 北海道大学, 大学院国際広報メディア研究科, 助手 (50344528)
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Keywords | 北東アジア / 日本:韓国:中国 / 知的アクター / 官僚 / シンクタンク / 大学 / マスメディア / NGO:NPO:労働組合 |
Research Abstract |
国内における非政府の知的アクターおよびエリートの理論研究、及び事例研究から以下のことが明らかとなった。まず、知的アクターを当初、官僚・シンクタンク・大学・マスメディアの4分類としていたが、この4分類のうち北東アジアの官僚および商業ベースのシンクタンクは、政府や各国の財界と強い結びつきを持ち、既存の政治経済秩序の中で政策や変化を考えること。これは、従来の狭義のトップ・ダウン型エリートと類型される。この従来型エリートに対して、知的アクターとして台頭してきているのが市民・社会セクターのNGOやNPOを初めとした市民組織・団体、それに労働組合や学生運動組織・女性運動組織などの社会運動組織などであり、これらは知的センターであると同時に、既存の政治経済の体制の外側から政治や社会を考え変革を目指すという意味において、ボトムアップ型のカウンター・エリートとして類型される。そして、大学およびマスメディアの持つ知的能力と社会的影響力は、あるときにはエリート的機能を果たし、またあるときは、カウンター・エリートとしての機能を果たすことが確認される。 ここから、官僚・シンクタンク・大学・マスメディアの4つは、NGO・NPO、労働組合、多様な社会運動組織などと加えた、エリートの3類型、すなわち、エリート、カウンター・エリート、中間エリートという新たな広がりを見せた分析枠組みの中で議論を検討される必要性が認識される。また、北東アジアの国際関係において歴史上、中国や日本の民間や市民組織に見られるように、文化大革命、冷戦などの公式の交流がない、動乱の危機的情勢において、非政府の組織や団体が実質的なチャンネルとなって世界と北東アジア各国をつなぎ、この地域の国際関係にインパクトを与えていることが確認された。ここから、市民組織が外交に直接参加する北欧モデルとの比較も有効であることが視野に入ってきた。
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