2006 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおけるHIV/AIDSとガバナンス:国際化の中での変容を中心に
Project/Area Number |
18730111
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
元田 結花 北海道大学, 創成科学共同研究機構, 特任助教授 (20292807)
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Keywords | HIV / AIDS / アフリカ / ガバナンス / 開発 / 国際化 / ウガンダ |
Research Abstract |
まず、2006年2月下旬から3月中旬にかけて、ウガンダの首都カンパラで行ったヒアリング調査を元に、政治的空間とウガンダ政府、市民社会、国際的な行為主体の三者の関係性について分析した。それに依拠する形で、2007年7月に北海道大学大学院法学研究科の政治学研究会にて、政府・市民社会との関係で、国際的な行為主体が強大な国内政治主体ではあるが万能ではないこと、市民社会にとって政治的空間は政府から「招待されたもの」に過ぎない一方で、その制約的空間において市民社会は戦略的行動をとっていることなどを示した。 加えて、市民社会と援助供与主体との関係については、HIV/AIDS対策に限らず開発援助における一大テーマであるため特別に取り上げ、市民社会を援助過程に包括することの限界を分析した。その成果は、元田結花(2007)『知的実践としての開発援助』(東大出版会)の一部に反映させた。同時に、より多面的な情報が必要であることが判明したため、2008年3月にブリュッセルにて、アフリカにプレゼンスの大きいEUおよびヨーロッパ系NGOに対してヒアリング調査を行った。現在、この調査を元に、援助供与主体内部、とくに本部での政策形成のあり方を分析している。 HIV/AIDS政策における国際的な要因の大きさについても、特に近年注目を集めている「権利ベースのアプローチ」に焦点を当てる形で、ウガンダを含めた事例を広く参照しながら分析を進めた。新自由主義的秩序が浸透する中で、先進国や国際機関の政策が整合性を欠いたものであることを指摘し、「規範と実践の交錯:HIV/AIDS、開発、人権」という論文にまとめた。この論文は、東大出版会から刊行される『法の再構築』の中の一章として収録される予定である(入稿済み)。
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