2007 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおけるHIV/AIDSとガバナンス:国際化の中での変容を中心に
Project/Area Number |
18730111
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
元田 結花 Hokkaido University, 創成科学共同研究機構, 特任准教授 (20292807)
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Keywords | HIV / AIDS / ガバナンス / アフリカ / グローバル |
Research Abstract |
本年度は、グローバルなレベルで展開するHIV/AIDS対策をめぐるガバナンスのあり方を把握することに力点を置き、以下の点での作業を進めた。 第一に、貧困と密接に関係するHIV/AIDS感染拡大のメカニズムを踏まえて、HIV/AIDS対策において国際的な行為主体に期待されている役割を整理した。同対策においては、医療・社会・経済・政治といった各側面に配慮しながら、長期的に取り組む必要性があり、広範な領域に跨る政策を執行する財源および能力の面から、途上国においては国際的な行為主体が果たす役割への期待も高く、現実にもプレゼンスが大きいことを確認した。 第二に、HIV/AIDSとともに、新興感染症として近年国際的な課題とされているSARS対策を比較の対象として取り上げ、HIV/AIDS対策の特徴をより明確に抽出した。特に、上で見たように、途上国の現状を踏まえて、同対策への援助を供給する国際的な行為主体の発言力は大きいが、実際の活動内容を見ると、財源や政策形成能力・執行能力には問題が多いこと、その一方で、対象国政府の主体性を損なう場合もあること、などを指摘した。 第三に、グローバルな対策を、ローカルな対策と結びつけて、HIV/AIDS対策をめぐるガバナンスの多元的な構造の把握に努めた。本研究の主な対象国であるウガンダに加えて、ブラジルなどの事例を参照し、政府が果たしうる役割の大きさ、および、政府が機能するために求められる財源負担能力、政治的意思と行政能力、政治体制などについて分析した。 以上の作業を、「国境を越える感染症対策」(遠藤乾編『グローバル・ガバナンスの最前線』東信堂2008年)、および香港中文大学における国際ワークショップ(2008年3月)での発表の形にまとめた。
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