2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際的観点からみた実物的景気循環論とサーチモデルによる日本の労働市場分析
Project/Area Number |
18730126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
JULEN Esteban P The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 講師 (60376572)
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Keywords | 日本の失業 / 労働者の流入・流出 / 非正規雇用 |
Research Abstract |
昨年度は本プロジェクト関連の日本の労働市場の研究を含む二件の論文を手がけた。 最初の論文は「90年代のTFP成長率鈍化と日本労働市場」は中島亮氏と田中隆一氏との共著である。本論文では、理論的見地から90年代の失業率増加の根底にある主因の研究を行った。その結果、失業率増加の主要原因は生産性の低下であり、それが雇用率の低下と労働者解雇の増加につながったという結論に至った。また、生産性の低下は生産および賃金増加の鈍化、労働者の流入、流出低下の原因にもなっていることが分かった。本論文はRIETIワーキングペーパーNo.09-E-003として発表された。 二番目の論文のタイトルは、「非正規雇用は行き止まりか正規雇用への踏み台か?構造推定による証拠」であり、同じく中島亮氏と田中隆一氏との共著である。本論文では非正規雇用が正規雇用につながる度合いの研究を行った。そのために日本のミクロデータを用い日本における労働の変遷の理解を試みた。非正規雇用は短期、中期的には正規雇用にはつながらないが、長期的な正規雇用の妨げにはならないという結果が出た。本論文はRIETIワーキングペーパーNo.09-として発表された。また、International Economic Review誌にも提出してある。 昨年度は、本二件の論文以外に、川口大司氏が主催する労働ワークショップにも参加し、毎月の会合では、メンバーの現在の研究について議論した。これにより、日本労働市場に関するわれわれの研究に対し定期的にフィードバックが得られることになったほか、マイクロエコノミクスや計量経済学等他の分野の研究者の意見を得ることもできた。本ワークショップは2009年度一杯継続する。
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