2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730128
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇南山 卓 神戸大学, 経済学研究科, 助教授 (20348840)
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Keywords | 退職 / 消費 / 恒常所得仮説 / 家計調査 |
Research Abstract |
本年度は,まず退職と消費行動の関係について,経済学的な視点から分析を行った内外の先行研究をサーベイした。予期された所得変化である退職は,消費行動を変化させないことが理論的に予想されるが,海外での先行研究(具体的にはイギリス・アメリカ・イタリア・ドイツなどの主要な先進国)によれば,理論的な予想にもかかわらず,退職に際して消費が減少するという観察が得られていた。これは,退職消費パズルと呼ばれ広く認知され,その解決が大きな関心を集めていることを確認した。それに対し,日本における先行研究は質量ともに十分ではないが,退職時の消費は必ずしも減少していないという結論が導かれる論文がいくつか存在していた。 そこで、他国との相違を検討するために,日本の退職プロセスについての制度的な特徴をサーベイした。その結果,日本の退職プロセスについて,定年退職制度とそれに付随した退職一時金制度が,諸外国と比べ特殊な制度であることが分かった。また,年金制度の過去30年の変遷についても検討を行った。その結果,世代による制度的な違いは大きく,パネルデータによる分析が必要であることが強く示唆された。 こうした予備的な考察を前提として,日本のミクロデータを用いた分析を開始したことが、本年度の大きな成果である。総務省統計局の協力の下,日本の家計に関する代表的な標本調査である。家計調査のミクロデータにアクセスすることに成功し,データの成型・加工に着手した・来年度以降,このデータを用いた分析を本格的に開始する予定である。
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