2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730134
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
石橋 郁雄 青山学院大学, 経済学部, 助教授 (30365035)
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Keywords | 経済理論 / 経済政策 |
Research Abstract |
本年度は、「リニエンシープログラムの適用を求め、複数の企業が捜査協力を申し出た場合、個々の減免率(課徴金免除率)をどう設定すべきなのか」を明らかにすることを目的とした研究を進めた。基本としたモデルは、一般的な数量競争モデルをベースにした繰り返しゲームモデルである。更に、企業数が異なる複数の寡占市場を一国の産業構造として、リニエンシープログラムが一国の産業構造に及ぼす影響に関する研究も行った。 まず、個々の寡占市場において最初の企業への減免だけが「査察に最後まで協力しない」カルテルを不安定化させるという研究成果を得た。次に、減免の可能性はその順番と無関係に「査察に入られるまでは続ける(査察には減免を狙って皆が争って協力する)」カルテルの利益率を等しく引き上げてしまうという成果を得た。これらの研究成果から、「最初に協力を申し出た企業にのみ完全な課徴金免除を認めることが、かなり広範な条件の下で望ましい」という結果を得た。 これとは別に、非常に特殊ではあるが、一定の産業構造の下では最初の企業への減免を部分的にした方がよい場合もあるといった結果も得た。この結果、大半の産業構造の下で最初の企業への全面的な課徴金免除が好ましくなるものの、常にそうとは限らないという主張が導かれる。ただし、ここでいう一定の産業構造とは、具体的に導出した諸条件を並べて見る限り、かなり限定的なものであり、現実問題としてどこまで重要なものと考えるべきなのかは未知数である。 また、以上の諸結果から、リニエンシープログラム導入に合わせた、規制当局の人的・物的資源の最適な再配分に関する理論的手がかりも得られたので、現在この分析を進めるための準備を進めている。
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