2006 Fiscal Year Annual Research Report
デヴィッド・ヒュームにおける文明社会の盛衰認識の研究
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18730140
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
壽里 竜 関西大学, 経済学部, 助教授 (20368195)
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Keywords | 啓蒙思想 / ヒューム / スコットランド啓蒙 / 18世紀 / 文明社会 |
Research Abstract |
本年度は8月にドイツで開催されたHume Conference(第33回国際ヒューム学会、開催地コプレンツ大学)においで"‘Hume's mistakes'and his view of faction"というタイトルで報告をした(事前にフルペーパー提出、審査あり。採択率35%)。本報告は、ヒュームが『道徳政治論集』(1741-2年)から『政治論集』(1752年)、そして『イングランド史』(1754-62年)へと書き進んでいくにつれ、自らがかつてコミットしていた党派的な見方をどのように自覚し、それを克服していったのかを主題としている。従来のヒューム党派観の研究は、彼自身が当初から表明していた政治的中立性を定常的なものと捉えていたが、本報告ではヒュームによる著作の改訂作業を検討することで、上述の変化を分析・考察した。その変化の契機として、本報告がとくに重視したのは1745年のジャコバイトの乱と、それに対する当時のウィッグ党の反応である。党派対立は、とりわけ当時のブリテンの制限君主制に内在する大きな不安定要因とヒュームは捉えていたため、ヒュームの文明観とも密接に関わる主題である。なお、本報告に際し、コメンテーターであるウィレム・レメンス(アントワープ大学教授)より貴重なコメントを賜った。 本課題のもとにおこなわれた研究として、すでにいくつかの学術雑誌に投稿中のものがあるが、審査に時間がかかる(3〜6ヶ月)ため、いずれも今年度の研究実績に掲載できる段階には至っていないことを付記しておく。
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