2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730153
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山口 昌樹 山形大学, 人文学部, 助教授 (10375313)
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Keywords | 国際金融 / 資本移動 / シンジケート・ローン |
Research Abstract |
本年度は、国際シンジケート・ローン市場の供給構造を分析した。他の地域とは異なり、アジア市場では邦銀を含むアジア系銀行と欧米系銀行が混在して活動している。とりわけアジア系銀行が欧米系銀行に比肩しうる地位にあることは特筆に価する。両者がどのような競合関係にあるかを分析することが分析の焦点である。分析には産業組織論の枠組みを援用した。参加行数の決定という市場行動の分析から市場構造を探った。参加行数に影響を与える要因は「情報の経済学」の視点から回帰モデルを用いて検証した。検証には2001年から2006年第1四半期までのミクロ・データを用いた。また、市場構造については典型的な競争度の測定ではなく、アジア系銀行と欧米系銀行との競合関係に注目した。 実証結果は以下の通りであった。過去の組成実績と参加行数とには非線形の関係があり、市場における知名度がある程度までは情報問題を軽減することが確認できる。格付企業、または上場企業であることは参加行数にプラスの影響を与え、情報生産を補完する効果が見受けられた。融資期間と参加行数とには非線形関係が確認できた。融資額と融資枠については予見されたプラスの効果を見出すことができた。担保については有意な結果は出なかった。アジア系銀行がアレンジャーとなるケースでマイナスの効果が確認でき、欧米系銀行との市場行動の差異が浮かび上がってきた。 アジア系銀行のアレンジャー案件は情報ギャップの大きい借入人に対して長期かつ欧米系案件と同様の規模の融資を少ない参加行数で供与している。これは一般的に想定されている行動とは異なる。一方、欧米系案件は情報問題が小さい企業向けであるため多くの参加行にローンを販売できている。こうした供給行動の違いを読み解く鍵は、欧米系銀行がよりtransaction lendingの要素が大きい取引を、アジア系銀行が長期的融資関係や包括的取引関係を背景にしたrelationship lendingを志向していることにある。こうした分析結果は別の見方をすると、欧米系銀行とアジア系銀行との市場における棲み分け的構造の存在が示唆されている。
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