2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730158
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
神林 龍 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (40326004)
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Keywords | 解雇紛争 / 規制 / 司法過程 |
Research Abstract |
日本労働政策研究・研修機構(JILPT)で収集された、最高裁判所事務総局による解雇事件に関する特別集計結果を用いて、1980年代以降の解雇事件の全般的傾向を分析するために、都道府県別のデータ・ベースの作成にとりかかった。JILPTの研究報告書でも指摘されているように、解雇事件の動向(和解比率、判決決定までいたったなかでの労働者側勝訴比率など)は都道府県でかなり違った傾向をもっている。とくに、多くの解雇事件を扱う大阪地裁と東京地裁では大きく異なる。JILPTの研究報告書では、これらの傾向の違いが経済活動に影響を及ぼすかどうかは検討されておらず、本研究ではまずこの関係を検討することを考え、都道府県別の経済指標とくに労働市場に関わる経済指標を多く取り入れたデータセットを構築している。ただし、労働指標のなかでもっとも重要と思われるフローの指標、具体的には都道府県別の雇用創出率/喪失率/再分配率は政府統計の目的外使用が必要なことから作成に時間を要している。 また、収集されたデータおよび分析結果について、Yale大学法科大学院Robert Ellickson教授、Yale大学経済学部浜田宏一教授らと綿密な議論を行い、さまざまな知見を得た。その大要は、よく指摘される解雇規制の効果を推定する場合の計量経済学的な問題点にとどまらず、解雇紛争の全体にしめる裁判過程の位置づけ(具体的には当事者の意思決定の構造や弁護士・裁判官などの仲介者の役割など)を詳しく検討し、社会の中での司法過程の役割という全般的な問題とつなげる示唆をいただいた。これを平成19年度の大阪地裁のデータ作成に反映させ、裁判官のキャリアを分析対象に加えることを検討している。
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