2006 Fiscal Year Annual Research Report
都市労働市場におけるジョブ・サーチ理論のミクロ実証分析:タイの経験
Project/Area Number |
18730159
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
町北 朋洋 一橋大学, 経済研究所, 研究員 (70377042)
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Keywords | ジョブ・サーチ理論 / 都市労働市場 / ミクロ実証分析 / 労働市場政策 / 発展途上国 / 地域間労働移動 |
Research Abstract |
平成18年度は、タイ統計局が公開しているThailand Labor Force Surveyの個票を利用し、綿密な実証分析の蓄積が望まれていた、発展途上国経済の労働移動に関する様々な仮説への統計的推測とその吟味を行った。特に都市・開発経済学の理論・実証結果を取り入れながら、マイクロレベルの求職・求人行動を分析の中心に据え、これら異なる分野を統一的に研究した。分野横断的な研究によって、従来の労働経済の実証研究と比較して、新しい知見を得て、それらは雑誌論文1点にまとめられる。 平成18年度は主に「大都市に労働移動することで労働者の生産性が高まる」という移住学習仮説について、タイ労働力調査の個票を用いて検証した。地域間労働移動における「自己選抜効果」と「移住学習効果」を識別した結果として、潜在的に生産性の高い労働者が大都市に向かって移動を行い、ジョブ・マッチングが悪く生産性の低い労働者は退出し、ジョブ・マッチングが良く生産性の高い労働者は長期間にわたって大都市に生き残る、という自然淘汰機能が働いていることを実証的に明らかにした。さらに、質の高いジョブ・マッチングを得た移住者は、大都市に長期間滞在することによって賃金が上昇する一方で、農村に新たに移住し、長期間滞在したとしても、賃金上昇は大都市よりも小さく、「移住学習効果」は大都市の方が大きいことも明らかになった。 公刊された雑誌論文以外にも、本年度は、1997年に突然発生したタイ金融危機によって、タイ国内労働市場がどのように変貌したかを吟味する実証研究および市場を介さないジョブ・ネットワークが地域に粘着的であり、求職方法選択にとって重要であることを精査する実証研究も行った。現在投稿中であり、審査を経て今後専門雑誌において公刊されることが期待されている。
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