2008 Fiscal Year Annual Research Report
GATT/WTO体制における環境及び労働の問題に関する研究
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18730168
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神事 直人 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (60345452)
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Keywords | 国際貿易 / GATT / WTO / 生産工程・生産方法(PPM) / 生物学的侵入 / 地球温暖化問題 / 国境税調整 / 炭素関税 |
Research Abstract |
平成20年度には以下の研究成果が得られた. まず, 地球温暖化問題に対する様々な政策的措置に関して検討を行った上で, 欧州連合が導入を検討している「国境税調整」及び「炭素関税」に関して経済学的な分析を行うとともに, WTO協定の整合性を検討した. その結果, これらの政策手段は経済学的には十分正当性をもちうるものの, 偽装された保護貿易手段としても用いることが可能であるため, 市場構造などにそくして更に分析を行う必要があることが明らかになった. 次に, 食品安全性問題や生物学的侵入問題等に対する政策に規律を与える, WTO協定のSPS協定に関しては, 昨年度までに行った理論分析の精緻化を行った. 特に, WTOの紛争解決機関において紛争処理が行われる際に, 当事国双方とWTO側に情報の非対称性が存在することに着目し, そのような状況においてSPS協定が果たす役割を経済学的な観点から明らかにした. しかし, 他方では, SPS措置が偽装された保護貿易手段として用いられることを防止する上で, 現在のSPS協定には一定の限界が存在することも明らかになった. さらに, 「貿易と労働」の問題に関連して一部で積極的な議論が行われている「社会条項」や「社会条項関税」等について理論的な分析を行った. これらは, 労働基準が緩い国に対して労働基準の強化を促すことを目的としている. 発展途上国などはWTOがこうした政策を容認することに強く反対している. しかし, 本研究における分析では, 市場構造のあり方によっては, これらの政策の導入によって, 当初労働基準が緩かった国の企業の利潤が増加するようなケースもありうることが明らかになった. このような分析結果を踏まえると, この問題に関してはさらに詳細な分析を行っていく必要があると考えられる.
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