Research Abstract |
今年度の研究実績は次の通りである.まず,日本労働研究機構より,成果主義に関する行動経済学的視点からの総括をしてもらいたいとの依頼があった.それに対して,『成果主義賃金に関する行動経済学的分析』(日本労働研究雑誌,No.554,pp.36-46,2006年9月号)では,インセンティブに関する行動契約理論的研究をサーベイするとともに,成果主義的報酬を導入する場合に職務遂行方法に関する権限委譲を伴った場合にその様な報酬がインセンティブとしての機能を果たすという点を指摘した自分の研究を簡単に紹介している.また,これに関しては同様の英語論文の執筆依頼もあり,"A Behavioural Economic Approach to Performance-based Wage Systems,"という論文が,今春,Japan Labor Reviewに掲載される予定である.次に,peer pressureの企業組織への応用研究としての"Incentive Effects of Peer Pressure in Organizations"という論文がEconomics Bulletin, Vol.10,No,14,pp.1-10,November 2006,に掲載された.そこでは,peer pressureが報酬体系にどのような影響を与えるかという自分のこれまでの研究を拡張し,最適な組織形態のあり方を議論した.最後に,一橋大学大学院商学研究科のCOEプログラムのフェローとして,『部下の成果を引き上げるピグマリオン効果:自己充足的予言の行動契約理論的分析』という論文を執筆した.本論文は,『日本企業研究のフロンティア日本企業研究センター研究年報(3)』に掲載予定である.これは,伊藤秀史一橋大学大学院商学研究科教授との共同研究("The Pygmalion and Galatea Effects : An Agency Model with Reference-Dependent Preferences and Applications to Self-Fulfilling Prophecy")を紹介する論文である.そこでは,部下(生徒)自身が自分の能力に対して高い期待を持つ場合に実際に彼/彼女のパフォーマンスが上昇するというガラティア効果と上司(教師)の期待が部下(生徒)のパフォーマンスを引き上げるというピグマリオン効果というマネジメントや教育心理学の分野で指摘されていた現象を,行動契約理論の枠組みで理論的に明らかにした.
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