2006 Fiscal Year Annual Research Report
地域産業における知識のスピルオーバー効果に関する実証研究
Project/Area Number |
18730181
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 伸生 関西学院大学, 経済学部, 助教授 (00351726)
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Keywords | 知的ストック / 特許 / 高付加価値化 |
Research Abstract |
今年度の研究は、知的ストックの地域的なスピルオーバー効果の有無を検証する前段階として、地域における知的ストックの充実が、実際に地域産業の高付加価値化に貢献しているか否かについての実証研究を行った。 地域産業の付加価値の増減に対して、知的ストックがどのように寄与しているかを明らかにするため、その測定指標として特許データベースを活用し、それを生産関数に含めることで推計を行った。分析対象として、加工組立型業種の集積が相対的に高い、3大都市圏以外の地域である、長野県、静岡県、広島県の3県を選んだ。 まず、国際特許分類のサブクラスレベルの分類を日本標準産業分類の中分類への対応付けを行い、各地域に存在する特許を業種毎の集積件数に変換した。次に、それを同業種の労働力の増減(従業者数)および資本ストックの増減(有形固定資産残高)と合わせて生産関数を構築し、対象地域の工業付加価値額の増減に対する影響の有無の実証を行った。第3に地域産業における知的ストックの充実と高付加価値化の関係が、知的ストックの充実⇒高付加価値化という因果関係(地域産業高付加価値化に対する前方連関)と、高付加価値化⇒研究開発余力の増大・活性化⇒知的ストックの増大という関係(後方連関)の、いずれの関係性が強く現れているかについて検証を行った。 今年度の発見は主に以下の2点である。第1に、知的ストックの地域における蓄積は、大部分の業種で地域産業の付加価値に対して有意にプラスの影響をもたらしている。第2に、知的ストックの蓄積が地域産業の高付加価値化に及ぼす影響(前方連関)は、地域産業の発展がR&Dの活発化を通じて知的ストックの増大に結実する関係性(後方連関)よりも、多くの場合において強く現れている。 なお、これらの研究成果については、本学の研究季報である『経済学論究』の第61巻第2号(平成19年6月刊行予定)に掲載される予定である。
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