2007 Fiscal Year Annual Research Report
金融業の産業組織を考慮した効率的な証券市場システムの整備
Project/Area Number |
18730186
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松井 建二 Yokohama National University, 経営学部, 准教授 (20345474)
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Keywords | 証券市場 / 金融業 / 産業組織 / 市場の効率性 / 社債 |
Research Abstract |
本年度は実施計画に基づき、社債の発行市場から、流通市場に分析の焦点を移し、非効率性の1つである季節性が存在するかどうかを検証した。社債市場に関して流通市場の非効率性、あるいは季節性やアノマリーを分析する研究は、株式市場と比較すると国際的にもほとんど見られない。数少ない先行研究では米国の社債市場の分析がなされているが、そうした研究では米国の債券市場では株式市場と同様、多くの企業の会計年度が始まる1月に証券価格が上昇することが実証的に示されている。さらに米国の先行研究では、格付けが低いジャンク債が特に決算期に価格を下げ、逆に新しい会計年度が始まると価格が上昇することが明らかになっている。これに対し我が国では、上場企業の8割前後が3月決算であり、さらに個人投資家や個人事業主は12月が決算月となる。こうした制度的要因を考慮し、本年度に実施した実証研究では、こうした決算期のタイミングが社債市場の非効率性に影響を与えていることを示した。これは財務情報を開示する決算期前には危険資産を売却するという仮説(window dressing)、あるいは節税対策のために証券を売却する仮説(tax-loss selling)と一貫するものである。この傾向は特に格付けが低い社債ほど強まることも示されたが、この結論も上に述べた米国の実証研究と同様なものとなる。またこれに付随して、我が国の格付機関は、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズといった海外の格付け機関よりも、企業の財務状態を高く評価する傾向があることなども明らかになった。以上の成果は本年度末に国際学術雑誌に投稿したため、研究成果は研究代表者所属機関のワーキングペーパーとしている。 またこの他に、前年度から継続して行っている発行市場の非効率性の研究成果は、本年度に国際学術雑誌に受理され、出版予定となっている。さらに証券業の生産効率性を計測し、その産業組織を実証的に分析する研究を前年度から引き続いて行ったが、こちらの成果も今年度国際学術雑誌に受理され、出版予定となっている。
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Research Products
(5 results)