Research Abstract |
最終年度である本年度は,前年度までに実施した研究を国際学会等において報告を行い,研究者と実務家の双方から知見を得ることにより,研究をより現実の市場を描写するように向上させた. 前年度までに, 我が国の社債券の流通市場では, 債券価格は多くの企業の会計年度が開始する4月以降に統計的に有意に上昇し, 決算期が近づくにつれ, 価格は平均的に低下していくという季節性が検出されていたが, 今年度はそうした非効率性を裏付ける理論的な仮説を探った. 我が国では, 投資家側が国債に対して追加的なリスクスプレッドを取る誘因を強く持つのは会計年度が始まる4月であり, 決算期の12月, あるいは3月が近づくにつれて, その誘因を弱めるために, 年度初めには社債券が多く需要される結果, その価格が上昇し, 金利は低下することが明らかとなった。さらに資金調達者側は多くの企業の会計年度が始まる時期には投資意欲が旺盛となるため, 起債が頻繁に行われ, 債券市場が活性化する結果, 債券価格が上昇する. したがって, 証券市場の非効率性の1つと解釈される季節性は, 決算期のタイミングに依存するものの, その理論的な説明は米国の証券市場とは異なる根拠に求めなければならないことが明らかとなった. 以上の研究の具体的な成果としては, ヨーロッパ会計学会の年次大会, およびアメリカ会計学会の年次大会で報告を行い, それぞれのプロシーディングスに収録された. この研究論文についてはさらに国際学術雑誌への投稿活動を継続する. また, 前年度に既に受理されていた論文2本が学術雑誌Applied Financial Economics LettersとInternational Journal of Revenue Managementに本年度10月にそれぞれ掲載・出版された.
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