2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730191
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
猪飼 周平 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 准教授 (90343334)
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Keywords | 医療 / 歴史 / 福祉 |
Research Abstract |
1)病床の歴史的変動 戦前から戦後日本における病床の性質の変遷について、内務省『衛生局年報』、厚生省(厚生労働省)『医療施設調査』、『医師・歯科医師・薬剤師調査』から、病床ストックの変動の概要を確認するとともに、自治省『地方公営企業年鑑』、厚生省(厚生労働省)『医業経営実態調査総合報告』、中央社会保険医療協議会『医療経済実態調査』等を検討した。その結果、20世紀に共通する開業医を媒介とした病床ストックの蓄積形式が、低コストでの病床蓄積を可能としつつ、病床の用途に関して高いフレキシビリティを付与することになってきたことが判明した。1980年代以降におけるいわゆる「社会的入院」現象もこの知見から説明されうる。 2)医師需給構造の歴史変動 この領域は、近年医局制度の弱体化に伴って急激な変動がみられる領域である。この問題に対して長期的政策展望を得るという観点から、医師需給構造の歴史変動に関する調査研究が進められた。戦前期に関しては、東京帝国大学、九州帝国大学、長崎医科大学、熊本医科大学、千葉医科大学、東京医学専門学校、九州医学専門学校など、戦前期における医学校の卒業生名簿を活用し、戦前における医師のキャリアパスを確認した。戦後については、医局制度に関する調査を進めた。その結果、医局制度の弱体化は、医師がより専門性を高めてゆこうと動機づけられていることを背景とすることが確認された。その一方で、社会全体としては、プライマリケア医への需要を高めつつあることから、将来的に医師の能力と社会的要求との間により大きなミスマッチが発生する可能性があることが示された。 3)コミュニティ政策の中の医療へ 20世紀を通じて医療はその特権的重要性を有すると理解されてきた。この認識がここ20年ほどの間に大きく変化しつつある。この点について、20世紀医療を歴史的に総括することを通じて考察しつつある。
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