2008 Fiscal Year Annual Research Report
地域産業振興の新展開に向けた政策分析・地域比較-雇用創出・人材育成の視点から-
Project/Area Number |
18730197
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
松永 桂子 The University of Shimane, 総合政策学部, 准教授 (20405476)
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Keywords | 地域産業 / 地域産業政策 / 中山間地域 / 農商工連携 |
Research Abstract |
従来の地域産業政策は、主に大都市や交通インフラが整った中小都市を対象としており、中山間地域どの条件不利地域に適合するものではなかった。だが、2000年以降、高齢化や人口減少、財政悪化など地経済の閉塞感が高まる中で、地域間格差が改めて問題視されるようになる。従来の都市型中心の地域産業政策の枠組みを脱却する必要性が高まってきた。そこで、中山間地域などの地方では「農」と「食」を産業の土台としながら、地域で収入を得る仕組み、安定的な雇用を持続させる仕組みが求められるようになっている。 こうした政策的な背景を受け、最終年度にあたる平成20年度には、中山間地域の自立や産業化に着目し、成果の一つとして、関満博・松永桂子編『中山間地域の「自立」と農商工連携』(新評論、2009年2月)を刊行した。中山間地域を「産業化」の点から捉えた新しい視覚を提示し、農村女性が収入を得る仕組みとしての農産物直売所や農産物加工場に注目した。地域としては、根の雲南市、奥出雲町、旧邑智郡、匹見町の4地域を対象にフィールド調査を実施し、新たな地域ビジネスの展開プロセスを追った。その際、農業法人化、建設業の農業参入、コミュニティ・ビジネスの動きに注目した。そして、「農」や「食」にまつわる産業化の可能性や、従来の農産物流通に頼らない自立的な販路開拓の動きを示唆した。 このように、中山間地域の自立に向けて、地域収入の獲得や雇用の維持、そして地域活性化などを包括的に捉えていく視点を提示した。現在では、中山間地域の産業化について調査した研究は少なく、地域産業政策のあり方を考える上で貴重な研究となるであろう。
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