2006 Fiscal Year Annual Research Report
リスクシェアリング機能としての社会保障に関する研究
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18730198
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮里 尚三 日本大学, 経済学部, 専任講師 (60399532)
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Keywords | 社会保障 / リスクシェアリング機能 / 世代重複モデル / 固有ショック / 世代間格差 / 給付と負担の一対一対応 / 最低保障年金 / シミュレーション分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、世代間格差という社会保障の負の側面だけでなくリスクシェアリング機能という正の側面も同時に考察対象として、理論的、定量的に分析を行うことにある。本研究では世代重複モデルを用いるが、労働生産性に固有ショックを与えることにより世代内の異質性をモデルに組み込み分析を行っている。 研究成果は「世代内の異質性を考慮した年金改革の分析-スウェーデンの年金改革を背景として-」(『季刊社会保障研究』第42号)に収められている。シミュレーション分析の結果、現行の基礎年金(基準ケース)を完全な報酬比例型に変更した場合、変更後は資本と労働がともに増加する結果となった。しかし、一方で社会厚生では変更前より低くなる結果となった。報酬比例型の場合、従前所得が給付水準に反映されるため、労働供給のインセンティブが基準ケースよりも高くなる。そのため、労働が増加し、その結果、資本も高まる。しかし年金給付水準に世代内の再分配的要素がなくなったため、所得変動のリスクが大きくなり、社会厚生の水準では基準ケースより低くなる。以上の結果から、給付と負担の一対一対応だけでは社会厚生を低下させる可能性があり、最低保障年金(補足年金)の水準をどうするかという点などが今後の年金改革で重要であることが示唆された。また、この研究をリバイズしたものを2006年8月の国際財政学会で口頭発表した。 その他に社会保障のリスクシェアリングを直接扱わないが、「厚生年金における保険料水準固定と財源選択の効果-世代間と世代内の公平性に着目した一般均衡動学モデルによる分析-」(『年金改革の経済分析』府川哲夫・加藤久和編)、「社会保障制度における望ましい財源調達手段」(RIETIディスカッション・ペーパー)で、社会保障の望ましい財源などを分析している。いずれの研究でも消費税が経済効率性を高めるという点が共通である。
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