2007 Fiscal Year Annual Research Report
BIS自己資本比率規制と銀行の貸出行動に関する理論・実証研究
Project/Area Number |
18730207
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡部 和孝 Keio University, 商子部, 准教授 (80379106)
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Keywords | 不動産融資 / 自己資本比率 / BIS規制 / 不良債権 / リレーションシップ / 中小銀行 |
Research Abstract |
2007年に一流の国際的専門雑誌(Journal of Money, Credit and Banking)に掲載された論文、"Prudential Regulation and the "Credit Crunch": Evidence from Japan"では、1980年代後半のバブル期に不動産融資への比重を高めた銀行が、地価バブル崩壊により1990年代に総資産に占める不良債権比率が上昇、大蔵省による不良債権処理圧力の強まった1997年度に、自己資本比率が大幅に低下し、自己資本比率規制(いわゆるBIS規制)の下で自己資本比率引き上げを目的としてリスク度の高い資産である貸出金を圧縮したことが明らかになった。研究成果に基づき国内外の大学、金融庁、日本銀行等の実務家、研究者と意見交換を行うとともに、成果の一部が、フィナンシャル・レビューに発表された。 また、平成17年度にRIETI DP 05028"How Are Loans by Their Main Bank Priced? Bank Effects, Information and Non-priceTerms of Contract" として公表した論文を改訂した論文"How Large Is the "Hold up" Cost of Relationship Lending?Evidence from Main Bank-Small Firm Relationships "では、経営情報の公開が不十分な中小企業向けにメインバンクが融資を行う際の金利の決定要因について実証的に分析した。その結果、大手銀行に対して不良債権比率の削減を要求した金融政策プログラムが公表された直後の2002〜3年に地方銀行、信用金庫等、中小金融機関が中小企業に融資する場合は、不良債権比率の高い銀行ほど貸出金利を引き上げるが、大手行では、不良債権比率の高低は貸出金利には影響を与えないことが確認された。これは、借り手のリレーションシップに基づいて他の貸し手では入手できないような借り手に関する情報を中小銀行が入手し、その情報を利用してある種の超過利潤を獲得していることの証拠となるものである。論文は北海道大学、名古屋大学、東北大学、名古屋大学、小樽商科大学でのセミナー、及び、査読付きのMidwest Finance Associationで発表研究者と意見交換した。また、平成20年度開催の査読付き学会、Financial Management Association European Conference、Financial Management Association Annual Meeting、AsianFinancial Association・Nippon Finance Association Conferenceに受理された。また成果の一部が三田商学研究に発表された。
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Research Products
(4 results)