2007 Fiscal Year Annual Research Report
内生的選好および社会意識の経済理論に基づく所得格差社会の動態についての研究
Project/Area Number |
18730219
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀 宣昭 Kyushu University, 大学院・経済学研究院, 准教授 (50304720)
|
Keywords | 経済理論 / 情報の経済学 / 教育の経済学 / シグナリング / マッチング |
Research Abstract |
シグナリング・メカニズムとしての大学・学生間マッチングの経済理論モデルの作成 標準的な教育シグナリング・モデルを応用して、学生が入学=マッチした大学名が、学生の労働市場での生産性のシグナルとして機能する経済理論モデルを開発した。 このモデルは従来のマッチング・モデル、教育シグナリング・モデルと比較して以下のような特徴を持つ。従来のマッチング・モデルでは、結婚市場や企業と労働者のマッチングなどを主な応用対象としており、そこでは、生産性や相手に対する便益において優位な者同士によるアソータティヴなマッチング・パターンの形成が考察の対象となっているが、当該研究が開発したモデルにおいては、マッチングの一方の当事者である大学の側に、根源的な優劣の差異が存在しなくても、「よい大学」「悪い大学」といった評判の差異や、同ランクとしての一群の大学に対するいわゆる「フレーミング」が、シグナリング・ゲームの均衡としてサポートされる。このような大学の序列は、学生側に加えて、労働市場での使用者側の安定的な均衡「信念」として形成されるものである。 また、従来の教育シグナリング・モデルでは、均衡概念の精緻化の結果、分離均衡のみが頑健な均衡としてサポートされるのに対し、本モデルでは、マッチング・モデルをベースとしているために、一括均衡に対応する一部の大学と学生の間のランダム・マッチングが、頑健な均衡を形成する要素として、アソータティヴ・マッチングと混在可能であることが示される。 続いて、大学が学生から入学金を徴収するモデルの開発に着手した。予見される主要な結論は、入学金水準が一律に固定される場合には、大学と学生のアソータティヴ・マッチングでは、標準的なシグナリング・モデルと同様、過大な教育投資が選択されるが、比較的妥当な設定の下で大学に入学金決定を認めさせると、均衡において教育水準が最適化されるというものである。
|