2006 Fiscal Year Annual Research Report
世帯形成を考慮したライフサイクルにおける不平等度に関する分析
Project/Area Number |
18730225
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
福井 唯嗣 京都産業大学, 経済学部, 助教授 (10351264)
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Keywords | ライフサイクル / 消費不平等度 / equivalence scale |
Research Abstract |
本研究の目的は,世帯の規模の多様性を考慮したうえで,わが国の消費不平等度の計測を行うことにある。世帯消費についてあらかじめ等価所得比率調整を行なう既存研究と異なり,本研究では,世帯規模の経済を考慮した動学的経済理論から導かれる関係式を前提に,その集計量(対数平均・対数分散)がみたすべき関係式を回帰することで,未知の等価所得比率を推定し,適切な等価所得調整の大きさ,ならびにわが国における世帯の規模の経済の大きさを計測するものである。 研究期間の前半にあたる本年度は,いくつかある統計的手法の候補について推計をおこない,その結果を比較することで,もっとも妥当と思われる方法について検討をおこない,研究成果としてまとめた。具体的には,(1)対数分散がみたすべき関係式(Deaton-Paxson equation)から等価所得比率を推計する方法,(2)対数平均がみたすべき関係式(オイラー方程式)から等価所得比率を推計し,それを対数分散がみたすべき関係式に適用する方法,(3)(1)の別バージョンとして,非線形制約をおき,Deaton-Paxson equationを推計する方法,の3つの方法に基づく推計結果を比較検討した。(1)の方法では,等価所得比率の推計値に幅が生ずるという技術的問題はあるが,分析の枠組みの妥当性の検証には有益であることがわかった。(2)の方法は簡便であるが,オイラー方程式の推計自体にまつわる未解決の問題を含んでいることから,別の方法の検討が必要であるとの結論に至った。(3)の方法は,非線形推定に基づくため,初期値の適切な設定が必要となる。その際,(2)の方法による推計値を初期値として採用することで理論とも整合的な推計結果が得られる可能性があることが明らかとなった。
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