2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際公共財の私的供給理論における技術革新・移転・波及効果と国際制度設計
Project/Area Number |
18730227
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
服部 圭介 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (50411385)
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Keywords | 公共財 / 国際貿易 / 環境 / 技術開発 |
Research Abstract |
3年計画の1年目として,本年は「国際公共財供給」の枠組みに「国際貿易」や「技術開発」を組み入れた新しい公共財供給理論の構築のために,既存研究のサーベイを行った.結果として, (1)既存の国際公共財の私的供給の研究では,公共財が持つ国際間外部性による国家間の相互依存関係を分析しているが,企業の国際競争や貿易を通じた国家間の相互依存関係を考慮できていない. (2)グローバル化が加速する世界経済において,環境や防衛,金融システムの安定などの要素は,より国際公共財的性質(相互依存関係)を強めているが,それだけでなく,グローバル化は企業活動の国家間の戦略的関係を強めている側面もあり,国際公共財の供給理論は「国際市場」の存在を考慮するべきである, という点が明らかになった. また,本年には,「市場」の存在を組み込む前の前段階として,従来の公共財の私的供給理論の枠組みにおいて,どのようなタイプのエージェント(国家や個人など)が,公共財を供給する技術を高める(または低める)インセンティブを持つのかという問題を考察した論文(Hattori(2006))を公刊した.そこでは,ある仮定のもとで, (1)相対的に(公共財供給)技術の高いエージェントはより技術を高めるインセンティブを持つが,技術の低いエージェントはそれを低めるインセンティブを持ちうる. (2)よって,公共財が私的に供給されるときには時間の経過とともに完全な特化がおこる傾向にある. (3)交互手番の公共財供給ゲームにおいては,先導者は必ず技術を高めるインセンティブをもち,追従者はそれを低めるインセンティブを持ちうる. ことが明らかになった.これらの結果は例えば地球環境問題における途上国の環境技術開発の効果や先進国からの技術移転政策の効果などの予測やそれらのインセンティブ構造を解明する上で重要な点であると考えられる.
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Research Products
(1 results)