2008 Fiscal Year Annual Research Report
世界経済成長期における英系資源企業と英連邦経済の役割 : 1950-1970年
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18730228
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 歩 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10374886)
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Keywords | 英系資源企業 / 英連邦 / カナダ / オーストラリア / リオ・ティント社 / BP社 |
Research Abstract |
H20年度は、研究第3年次(最終年次)であった。本年度も研究計画通り、海外の企業文書館における史料収集および研究の取りまとめを行った。調査対象は、英系資源企業リオ・ティント社とBP社であった。リオ・ティント社については、カナダ投資とオーストラリア投資の比較を行い、資源企業の英連邦投資の特徴が明らかにされた。カナダとオーストラリアの共通点は、(1) 鉱区獲得は新規開発ではなく既存鉱区の買収であったこと、(2) 既存鉱区買収の手がかりは開発資金の供給であったこと、(3) 鉱区の完全買収ではリオ社の技術とマーケティングの優位性が発揮されたこと、である。異なる点は、(1) カナダでは調査は外部の技術者へ委託し、オーストラリアでは自社の技術者が行ったこと、(2) カナダでは外部企業との提携はなく、オーストラリアではそれがあったこと、(3) カナダのウランはカナダ政府系企業に販売され、オーストラリアのウランは、イギリス原子力庁に販売されたこと、(4) 開発資金調達はカナダの場合は社債発行、オーストラリアの場合はイギリス原子力庁からの融資が主であったこと、である。まとめると、カナダ、オーストラリアとも、英連邦内での資源開発に際し、英連邦の枠組み内でのイギリス政府の支援が、リオ社にとって有利に働いたが、カナダでは市場活動に、オーストラリアでは政府との交渉に、投資の重点があった。したがって、特にカナダ投資において、ロンドン市場および英系金融機関の資金調達力が優位性を発揮した。BP社の事例は、イラン油田国有化後のBP社が有力な投資先としてカナダに向かった点がリオ社と共通し、2社の直接の意見交換を示す新史料も発見された。1950年代の資源産業において政治的安定を背景に英連邦が重要性をもったことが確認された。以上の成果の一部は、国際学会で発表されるとともに、ディスカッション・ペーパー(英文)にまとめられた。
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