Research Abstract |
研究代表者・石坂は, 研究期間の最終年度にあたり, 国際通貨基金(IMF), 国際復興開発銀行(BRD)とドイツとの関連についての研究文献を通観し, これまでの研究成果と残された問題点を抽出した。 IMF体制とマルクとの関連を明らかにするには, 研究対象国であるドイツ所蔵の資料のみでは限界があり, IMF体制におけるマルクの動向, 特に国際金融機関のドイツへの政策上の関与とその意図について十分に検討することはできなかった。このため, 2008年10〜11月にアメリカ合衆国・ワシントンDCにおいて国際通貨基金(IMF), 国際復興開発銀行(IBRD)資料室での調査を実施した。 IMFと加盟各国との関係を知るには, 年次コンサルテーション協議の記録文書がある。ドイツが14条国時代(1952〜1961年)に実施された協議の記録から, IMFによるドイツへの勧告が, 100%の貿易・為替自由化であり, IMFがドイツに対し輸入増加を通じて世界貿易の拡大に, 資本輸出によって世界経済のバランスのとれた成長に貢献することを期待していたことを明らかにした。1956年にはドイツの貿易・為替自由化がほぼ完了し, 国際多角的決済への復帰が実現した。ドイツの金・ドル準備の累積により, ドルの流動化が可能になり, ドイツは国際決済においてドルを供給し, 循環させる役割を担ったのである。研究代表者は, 以上のような検討結果を2008年度政治経済学・経済史学会秋季学術大会パネル・ディスカッション(1)において, ドイツのケースとして報告し, さらに『愛知淑徳大学論集-ビジネス学部・ビジネス研究科篇-』第5号に公表した。 上記のように, ドイツは国際収支黒字国として積極的な長期資本輸出を行った。換言すれば, ドイツの黒字部分は国際的な流動性供給の役割を果たしたのである。この供給は主としてIBRDを経由して実現したが, このような国際金融機関を通じた公的資本輸出の実態は, いまだ十分に解明されていない。IBRD所蔵の資料を分析し, ドイツの公的資本輸出の実態を解明することが今後の課題として残される。
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