2006 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期イングランド銀行による中央銀行創設・改革運動の研究
Project/Area Number |
18730236
|
Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 純 八戸工業高等専門学校, 総合科学科, 講師 (30413719)
|
Keywords | イングランド銀行 / 金融街シティ / 中央銀行 / アルゼンチン中央銀行 / 金融アドバイザー / ニーマイヤー報告書 / 現地政策主体 |
Research Abstract |
最初に活動報告を行う。本年度は主に国内外での一次資・史料収集と学会発表を行った。前者について具体的に述べると,イングランド銀行文書館(The Bank of England Archives)を訪問し,ニーマイヤー文書(Sir Otto Niemeyer Paper)とパウエル文書(F.F.J.Powell Paper)をデジタルカメラによって複写してきた。また,国内でも国際連盟(The League Nations)の経済統計資料の複写をはじめ,その他の二次文献の収集作業を行った。したがって,本年度において本研究で主に使用する資・史料の収集は終了することができた。さらにこれらを読解しまとめ,政治経済学・経済史学会全国大会と社会経済史学会東北部会において発表を行った。この発表において当該分野の研究者から多くのアドバイスを受けることができ現在は論文作成作業に入る段階に達した。 次に以上の活動の結果到達した研究の現状について述べる。本研究の最終目標は両大戦間期イングランド銀行による中央銀行・創設改革運動の全体像を把握することである。今年度の研究はオーストラリアや特にアルゼンチン中央銀行創設に関わる実証研究を行った。イングランド銀行から派遣されたニーマイヤーやパウエルが,アルゼンチン中央銀行創設においていかに関わったのかが,上述のイングランド銀行文書館所蔵の一次史料の検討により明らかにされた。具体的に述べると,従来の研究が指摘するように,ニーマイヤーやパウエルのアドバイスがスムーズに受け入れられイングランド銀行の理想像通りにアルゼンチン中央銀行が創設されたわけではなく、現地政策主体,具体的にはアルゼンチンの財務大臣ピネド(F.Pinedo)によってイングランド銀行の計画は骨抜きにされ,当時政権の座にあった保守連合政権の意図に沿った形で創設されたことが明らかにされた。このように,従来の研究では明らかにされてこなかったイングランド銀行のアドバイザーと現地政策主体との間の具体的なやり取りが明らかにされただけでなく,従来の研究史の大幅な修正がなされる可能性が切り開かれることとなった。 本年度は,史料収集と内容をまとめる作業,そして学会発表によって当該研究者のアドバイスを受けることに時間を使用し論文の発表にはいたらなかった。しかし,論文の土台となる2本の会報告書とレジュメを作成することができた。現在は実際に論文を執筆している段階にある。
|