2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730246
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 登 Kobe University, 経営学研究科, 准教授 (10347263)
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Keywords | 経営戦略論 / 半導体産業 |
Research Abstract |
古典的な戦略論の理論基盤である経済学では、自らの利害を追求する合理的な主体が資源動員を巡って競争する計算された行為として戦略は捉えられた。そこでは分析前提として資本主義市場というメタ制度が想定される。その結果、企業の利害は技術的効率性として裁定され、資源は希少性のもとで把握され、市場もやはり功利的に反応する質点として対象化される。もちろん先行研究でも現実の企業が採る戦略を説明するべく、主体の計算能力に限定性を付与し(Simon,1947)、専門経営者の選好(Ansoff,1965)や企業固有のルーチン(Nelson and Winter,1985)などが議論されたが、それらも部分的な修正を図るものにすぎなかった(Roberts and Greenwood,1997; Rowlinson, 1997)。つまり既存の戦略論は、結局のところ市場というメタ制度を前提とした一般化とそこから規範的な戦略的指針を見出すことを目指してきた(桑田,2007)。 しかし実際の企業が採る戦略は同一条件下でも多様であり、顧客もまた様々な価値を見出す。このような戦略の多様性や市場のダイナミズムを、技術的効率性に部分的な修正を図るのではなく、正面から捉えるために本研究では、このような問題意識のもとで議論される「制度的戦略(institutional strategy)」の検討を行った。そこでは主体の行為を規定する制度そのものを変更する行為として、戦略が捉えられる(e.g.Lawrence,1999; Beckert,1999; Levy and Scully,2007)。この概念は、制度派組織論における近年の理論的課題にも通じる。すなわち制度に埋め込まれながら制度を変更する行為はいかに説明可能か。一般に「埋め込まれたエージェンシーのパラドクス」と呼ばれるこの問題は、制度論の立場から戦略的エージェンシーの定式化を求める。
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