2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730246
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 登 Kobe University, 経営学研究科, 准教授 (10347263)
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Keywords | 戦略 / 市場 / 競争 / 政治性 / 実践 / オンライン証券 / 制度的企業家 / 制度 |
Research Abstract |
最終年度の研究では、これまで本研究が検討してきた内容を総括する。本研究の目的は、第一に、企業の戦略的行為を理解するための理論的基盤を、これまでの経営戦略論の射程を超えた理論的基盤をまとめることにある。この点において、本研究では、昨年度までの研究において、企業が自ら埋め込まれた制度を変更する戦略的行為とはいかなるものかという問いに挑む制度派組織論の知見を参照してきた。第二に、当該の理論的基盤の下で、これまでの競争戦略論では捉えきれなかった企業の戦略行動を分析することにある。この点において、本研究では、製造業の制度(メーカーとサプライヤーの関係を取り結ぶルールと手続き)変化を分析したものを公刊し、また、昨年には我が国の証券業界におけるオンライン証券と大手証券の競争関係に関する分析を深め、積極的に競争相手の制度的条件を射程に入れた戦略的行為の在り方を探求してきた。 本年度の研究では、これらの研究成果をより精緻化するさらなる調査研究と、学術雑誌への投稿や学会発表を行った。まず、理論的な精緻化としては、「制度に埋め込まれた主体がいかに制度を変更するか」というより一般的なテーゼに挑む制度的企業家という概念の定式化を行い、学会報告やディスカッション・ペーパーとして公刊してきた(今後は学術雑誌への掲載も予定されている)。次に、制度的戦略の概念を精緻化しつつ、さらなる事例分析を重ねてきた。その結果は、学術雑誌『組織科学』において掲載された。 さらに、本年度の研究は、これまでの研究内容を総括するに留まるものではない。業績に示されるように、ベンチャー企業におけるイニシアティブ争奪の政治的プロセスを検討する議論や、そこに研究者をも巻き込んだ「実践」の在り方を検討する論文が公刊された。このテーマは、本研究の延長線上に位置づけられつつ、本研究から展望される新たなテーマとして今後取り組んでいきたい。
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