Research Abstract |
昨年より引き続き,公開特許公報のデータを利用しながら,中小・ベンチャー企業の特許の品質について解析を行った。社団法人発明協会が発刊している公開特許公報DVDを利用し,独自に構築した出願特許データベースでは,出願された特許の発行国,公報種別,公開日,出願日,公開番号,発明の名称,請求項の数,全ページ数,特許国際分類,出願人の氏名/名称,住所/居所,識別番号,発明者の氏名/名称,住居/居所,代理人の氏名/名称,代理人番号について統計的処理が可能である。 本研究では,特許品質を主に特許の権利範囲の広さとし,他社が製品開発する際に当該特許が及ぼす影響力が大きく,迂回技術を使用して目標製品を完成することが難しくなる特許ほど品質が良い特許であると定義した。当初,特許品質については,我々が考案した特許品質を調べるためのチェック項目に基づき一つ一つ詳細に調べていく予定であったが,出願される特許数が膨大であり,時間的制約もあることから,「特許品質=特許明細書の頁数」とし,統計的調査を行った。 平成16〜18年の3年間に愛知県で出願された全特許について,年間特許出願数による特許の頁数を調べたところ,年間特許出願数が少ない企業ほど特許明細書の頁数が少なくなっていた。また,この結果を代理人出願と自己(自社)出願に分けてみたところ,この傾向の原因となっていたのは自己出願よりもむしろ代理人出願の方であった。このように本研究の結果の一部として,中小・ベンチャー企業が特許を取得したとしても,さらに言えば,それが代理人に依頼して取得した特許であっても,十分な権利範囲が得られておらず,経営戦略において有効になり得ない品質の低い特許が多くあることが明らかになった。このようなことは,自社においてイノベーションが比較的多い頻度でなされたとしても,それを上手に「価値獲得」に繋げられていない現状であることを示している。
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