Research Abstract |
本研究では, 特許出願を代行する, 言わば特許出願の専門家である代理人が記載する特許明細書には, 確実に特許を取得するために頁数などにある程度の基準があり, また慣例的テクニック等も隠されていることを予測した。 愛知県において, 2006年に代理人によって出願された特許(23,647件)および個人(個別企業)が代理人に頼らずに自身で出願した特許(2,072件)の特許明細書の頁数の分布を調査した結果, 代理人が記載した特許明細書と個人が記載した特許明細書の頁数には明らかな差があった。2006年に東京都, 大阪府および愛知県で出願された特許について, 代理人出願と個人出願の頁数の平均を求めた結果においても, 特許明細書の頁数には明らかな差があり, 特許の品質を担保するためには, 特許明細書において, ある程度の頁数が必要であることが伺えた。 今年度の研究結果からは, 特許出願は代理人に依頼した方が良いと思われるが, 自社にて特許を出願する場合, 年間の特許出願数が少ない企業(これらは特許マインドが低い中小企業と思われる)ほど, 特許明細書の頁数が減少する傾向にあり, このような現状を知らずに権利範囲の狭い, 価値獲得できない特許を取得していることが考えられた。ただし, 代理人に特許出願を依頼した場合にも, その権利範囲が当初設定したものと異なっていないか, 確認できているかどうかは非常に疑わしく, これらについては, 今後, アンケートおよびインタビューで裏づけを取り, 中小企業が真に価値獲得ができる特許戦略について検討する必要がある。
|