2006 Fiscal Year Annual Research Report
企業の自発的な会計情報の開示が市場の価格形成に及ぼす影響に関する理論・実証研究
Project/Area Number |
18730306
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内野 里美 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (80409622)
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Keywords | 会計情報 / 自発的情報開示 |
Research Abstract |
2006年度は理論研究のサーベイを進めた。これについては、2007年度に論文あるいは研究ノートとしてとりまとめたいと考えている。また、2006年度は実証分析を行うために必要なデータベースの作成も進めた。 理論研究については、自発的な会計情報の開示が市場の価格形成に及ぼす影響を理論面から明らかにすることを意図した、資本市場の価格形成モデルのサーベイを進めている。ここでは、公的情報(すなわち、強制的および自発的に公表される会計情報)が価格の流動性に及ぼす影響に関するモデル分析が中心となる。この影響の大きさを左右する要因として、会計基準の水準(企業が公表する最低水準の情報)と私的情報の水準(投資家が自らコストをかけて獲得する情報)が考慮される。会計基準が低い水準にあるとき、企業が自発的に開示する情報は、投資家の意思決定に大きな影響力を及ぼし、市場の価格形成に大きなインパクトを与える。一方、会計基準が高い水準にあるとき、すなわち、投資家と経営者の情報の非対称性がかなり解消されている状況では、企業が自発的に開示する情報は、投資家の意思決定にそれほど大きな影響力を及ぼさず、市場の価格形成にそれほど大きなインパクトを与えない。ここで、情報の非対称性の緩和を、会計基準の水準を高める(開示規制を強化する)ことによって行うべきか、自発的な情報開示の拡充に任せるべきかが問題となる。それは、開示費用(コスト)と開示効果(ベネフィット)の関係で決定される。この論議を分析モデルとして捉えることの意義は、会計基準によって強制する情報開示の水準と、自発的な情報開示によって企業が任意に行う情報開示の水準を決定する上での有用な示唆を提供することにある。
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