2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730321
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹ノ下 弘久 Shizuoka University, 人文学部, 准教授 (10402231)
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Keywords | 社会階層 / 国際比較 / 国際移動 |
Research Abstract |
前年度に実施した国際移動に伴う階層移動に関する基礎分析をふまえ、本年では国際移動と階層移動との関係について本格的な分析を行った。日系ブラジル人のなかには、ブラジルの帰国後の経済的な再適応の困難さから、日本とブラジルを頻繁に行き来する人たちがいる。頻繁な国境を越える移動は、近年トランスナショナリズみという理論的潮流の中で、肯定的な評価を得ているが、日系ブラジル人の社会経済的地位に対していかなる影響を及ぼしているだろうか。静岡県磐田市で集められたブラジル人を対象とする調査データを用い、計量分析を行った。その結果、頻繁な越境移動は、かれらの所得や正規雇用への移行に否定的な影響を及ぼしていることが、明らかになった。これは、従来のトランスナショナリズムの議論に再考を捉す結果である。こうした本研究の分析結果については、次の論文にまとめた。 Takenoshita, hirohisa forthcoming. "Circular migration and its Socioeconomic Consequences:The Economic Marginality among Japanese Brazilian Migrants in Japan." in Wong, Tai-Chee and jonathan Rigg. Asian Cities, Migrant Labour and Contested Spaces. Copenbagen:NIAS Press. すでに本論文は、2007年11月に提出し、印刷に向けての編集殻階にある。また本論文に関連する報告を、2007年12月にオーストラリア社会学会で行い、Referred Proceedingsとして、報告内容は刊行された。そして、日系ブラジル人の人的資本、労働市場セクター、越境移動の所得に及ぼす効果について比較検討し、その成果を日本社会学会で報告した。さらに、国際移動と階層移動の国際比較のための方法論的な検討を行い、「階層移動の国際比較に関する階層カテゴリーの構成」と題する論文にまとめ、刊行した。 本年度の後半では、国際移動と階層移動の日米比較を行うために、アメリカのセンサスの5%個票データの会析に着手した。そのなかで、同じブラジル人移民であっても、受入国がアメリカと賃本で異なることで、受け入れ後の労働市場への編入過程がどのように異なるか、分析を行っている。最終的な成果報告は、次年度に行う予定である。
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