2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730321
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹ノ下 弘久 Shizuoka University, 人文学部, 准教授 (10402231)
|
Keywords | 社会階層 / 国際移動 / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究課題では、ブラジル人移民を事例に、国際移動に伴う階層移動についての国際比較研究を行い、受け入れ社会の構造が移民の地位達成にいかなる影響を及ぼすか明らかにする。本年度は、これまでの研究の総決算として、ブラジル人移民の階層移動に関する日米比較研究を行い、その成果を米国スタンフォード大学で開催された国際社会学会社会階層部会にて報告した。そこで報告したペーパーは、現在海外の著名な移民研究の学術雑誌に投稿し、現在審査中である。データ分析においては、両国のブラジル人移民だけでなく、比較のために日本人や白人も分析対象とした。分析の結果、次の諸点が明らかになった。第1に、労働市場の分断性という点で、アメリカよりも日本の方が強く、ホスト社会への同化、適応に伴う地位達成が日本のブラジル人ではより困難である。第2に、学歴の労働市場での収益率はアメリカの方がはるかに高く、日本ではブラジル人の学歴は所得を高める効果が非常に小さい。第3に、国家の移民政策の観点では、日本では、日系ブラジル人の入国が非常に容易であることが、国際移動の費用を低減させ、結果としてアメリカのブラジル人よりも人的資本の低い者の入国を促している。このように、移民政策、受け入れ社会の労働市場の構造、学歴と労働市場との関係が、日米におけるブラジル人の地位達成のあり方に大きな相違をもたらしていることが明らかになった。さらに、上記テーマと関連して、日本のブラジル人移民の社会関係資本が、かれらの日本での地位とどう関係するかについても検討し、これについても学会報告を行った。
|